卒業研究

 印刷教材と放送教材だけの学びより,能動的に研究に取り組むことで理解は格段に深まると思います.必修ではありませんが,履修をお勧めします.

 私の講義やこのWEB SITEの「研究課題」をご覧になって,興味が沸いたら申請してください.テーマはご自身で提案されるのが原則です.やりたいことをやってください.問いを立てることは,問いに答えることより難しいと思います.ぼんやりとしたままでも申請していただいて,それから課題を相談の上具体化するのが現実的でしょう.「研究」と思って大げさに構える必要はありません.学術書や学術論文を読み込むのでも,既存のプログラムで「実験」してみるのでもよいと思います.ぼんやりとした興味から,研究課題を設定するために学ぶべきこともあります.卒業研究では,明確な問題設定とその解決に必要な力量を高める,準備をすることを主眼にして,大学院を視野に入れた助走でもよいと思います.私の専門とは離れた全く独自のテーマをお考えなら,仕事をはじめ,すでにやっていることに関連するものがよいです.職住接近という言葉がありますが,職研接近です.職でなくとも,地域貢献活動,ボランティア活動などでもよいでしょう.

 卒業研究は,具体的な課題に取り組みながら,講義で学んだことを総合,統合する,あるいは実践的に活用する経験を積む機会です.申請の際には,既存のプログラムを使って分子計算をしてみたいなどのやりたいことと,こんな勉強をしてきたなど準備状況を書かれると良いです.自分の得意なことと結びついているとなお良いです.

 卒業研究履修の手引き(例年6月初旬に学習センターで配布開始)から抜粋して下に示します.学習センター所長からアドバイスをいただくのもよいかもしれません.前年のうちに申請して認められれば翌年度4月開始ですが,提出が例年11月初旬と短期間で行います.

1.指導方針 卒業研究を通じて問題やその解決策への理解が深まることが大事だと思います. 具体的課題に取り組むことで, (1)多数の知識の関連を理解し,問題を俯瞰的に捉える力, (2)知識,技術を創造的活動,課題解決に活用する力,(3)結果を論理的に記述,発表する力を高めましょう.主体的,能動的に調べること,考えることが大切です.ディスカッション,コミュニケーションを大切にします.卒業研究は,問いを立てること,読んでもらうものを書くことの訓練にもなります.議論と添削を通じて,これらの力をつけていただきます.

2.専門領域と主な研究方法  分子とその集合系の構造,機能,反応の理論研究が専門です. 量子力学,統計力学などに基づく分子計算で,化学原理の理解を深めています.また,応用計算で医療に関係する分析用の分子設計など,社会的課題の解決に向けた研究をしています.国内外の科学教育,講義で取り上げる題材,例えばアメリカ化学会のChemistry at home,各国の環境基準に関連する調査研究なども行います. これらは主に,学会誌を始めとする文献やインターネットから情報を得ています.

3.指導領域 理論計算を活用して化学の問題を解く課題,量子化学,分子分光学の理解を深める課題,原子,分子の理論や計算法に関連する課題,実験研究をなさっている方が結果の解釈に計算を役立てる課題などが指導可能です.文献等の調査に基づく課題,教材開発の課題等も指導領域とします. 例えば,担当科目である「現代を生きるための化学」でも取り上げている,環境基準,温暖化,脱炭素化,SDGsに関する調査あるいは実践研究などです.

4.指導のプロセス 始まってから早い時期に,テーマや進め方を具体化します.メール,Zoom等(事情が許せば面接)により指導します.中間発表を8月下旬ごろに行います.個別指導と論文添削で12月頃の発表会に備えます.個別指導は月1回が標準的ですが,臨機応変に行います.分子計算をされる場合は,ご自宅からネットワークを通じて,幕張本部にある研究用コンピューターおよびソフトウェアを利用していただくことが可能です.無料のソフトウェアをご自分のPCにインストールして研究することもあり得ます.

5.履修者への希望・その他   私の講義や印刷教材をご覧になってください.いずれの科目にも研究の種が含まれていると思います.インターネットのhashimoto-ken.net(このサイトです)でも詳しい情報がご覧になれます. (1)実践を通じて学びを深めたい方, (2)分子計算を体験,活用したい方,(3)化学が関連する材料,医療,環境の課題に取り組みたい方,(4)教科,教材開発,調査研究をしたい方を想定しています.私自身は,主に理論的に分子を設計する研究,反応を解析する研究,化学教育(リカレント含む)の研究をしています.研究の仕方や論文の書き方も積極的に学びましょう.